金子工業株式会社(岐阜県下呂市)飛騨の山間地でミニ水力発電に挑んだ建設企業

岐阜県下呂市の金子工業株式会社は、基幹産業に乏しい飛騨地域で建設業以外の収益源を模索する中、地域に多い自然の水流を活用したミニ水力発電システムの開発に取り組んだ。

山間地の建設会社が抱えていた課題

岐阜県下呂市に本社を置く金子工業株式会社は、1935年の創業以来、道路や河川、橋梁、トンネルといった交通インフラの整備から住宅・マンション・工場までの建築工事まで、飛騨地域に根ざした総合建設会社として事業を続けてきた。同社が拠点とする飛騨地域は、山紫水明の地として知られる一方で、建設業に代わる確たる基幹産業に乏しく、地域の建設企業が今後も雇用を確保し、地域社会への貢献を続けていくためには、建設業以外の収益源を模索する必要があるという問題意識があったとされる。

こうした背景から金子工業が着目したのが、飛騨地域の随所に見られる自然な落差のある水流だった。大規模なダム式発電ではなく、山間部の地形をいかした小規模なミニ水力発電システムを開発し、まずは自社の拠点地域で実証したうえで、同様の地形条件を持つ他の山間地域にも普及させることを構想した。土木・建築の両面で培ってきた設計・施工技術は、こうした小規模発電設備の設置や関連する構造物の施工にも応用できると考えられていた。

正確なデータの収集という壁

構想の実現に向けて、金子工業はまず電力需要の調査と河川の水量観測に着手した。しかし、渇水期を含めた年間を通じたデータを得ることは容易ではなく、事業としての将来性や採算性を判断するためには、限られた時間と観測データの中でいかに正確な分析を行うかが課題になったという。モデル候補地として想定されたのは、岐阜県が所有する南飛騨健康増進センター周辺の水流で、事業化にあたっては最終的に岐阜県の使用許可を得る必要があり、そのためにも事業化の妥当性を裏付けるデータの蓄積が求められた。

産学官が連携した推進体制

この取り組みは金子工業単独ではなく、産学官が連携する体制で進められた点に特徴がある。岐阜大学は現地調査や事業分析、技術開発・設計面での指導を担い、下呂建設業協会は現地調査の実施や関係機関との協議、研究会の運営に関わった。岐阜県建設業協会は関係機関との協議や調査への協力を、岐阜県建設研究センターは岐阜県との連携や法規制面の調査を、それぞれ分担する形が取られている。発案から全体の統括にあたったのは同社の専務であり、事業化に必要な資金についても、飛騨地域を中心とする建設企業でコンソーシアムを組み、各社の得意分野をいかしながらリスクを分担する構想が描かれていた。試算では、発電機だけで数千万円、設備全体では1億円から2億円規模の資金が必要になると見込まれていたという。

目指した先にあったもの

この取り組みが目指していたのは、特定の競合に対する優位性の確保ではなく、地域産業の発展と地域雇用の維持であり、突き詰めれば飛騨地域における電力の自給自足だったとされる。建設業という単一の事業に依存しがちな山間地の企業にとって、地域資源を新たな収益源へと転換する試みは、事業の多角化であると同時に、地域社会への貢献という側面も併せ持つものだった。

その後、金子工業は土木・建築・不動産に加えて太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー関連の事業にも取り組む総合建設会社として、岐阜県下呂市を拠点に事業を続けている。山間地に立地する建設企業が地域資源をいかして新分野に挑んだ経緯は、同様の課題を抱える他地域の建設業にとっても参考になる事例の一つといえる。

FAQ

金子工業株式会社はどのような会社ですか

岐阜県下呂市萩原町に本社を置く総合建設会社で、1935年の創業以来、道路・河川・橋梁・トンネルなどの土木工事と、住宅からマンション・工場までの建築工事を手がけてきた飛騨地域の建設企業である。

ミニ水力発電システムとはどのような取り組みでしたか

山間部である飛騨地域に点在する自然な落差の水流を活用し、小規模な水力発電設備を開発・普及させようとした取り組みである。南飛騨国際健康保養地をモデル地域とし、電力需要や水量の観測データをもとに採算性を検討する段階から着手された。

なぜ建設会社が発電事業に関心を持ったのですか

飛騨地域には建設業に代わる確たる基幹産業が乏しく、地域の建設企業が今後も雇用を維持し地域社会に貢献し続けるためには、新たな収益源が必要という問題意識があったとされる。土木・建築で培った設計・施工の技術は、発電設備の設置にも応用できると考えられた。

この取り組みは金子工業単独で進められたのですか

案件の中心は金子工業だが、岐阜大学による現地調査や技術開発、下呂建設業協会や岐阜県建設業協会による関係機関との調整、岐阜県建設研究センターによる法規制面の調査など、産学官が連携する体制で進められた。

金子工業は現在も建設業を続けていますか

岐阜県下呂市を拠点に、土木・建築・不動産に加えて太陽光発電など再生可能エネルギー関連の事業も手がける総合建設会社として、現在も事業を継続していることが確認できる。

山間地の建設会社が新分野に進出する意義は何ですか

人口減少や公共工事の変動に左右されやすい山間地の建設業にとって、地域資源を活用した新分野への展開は、雇用の維持と地域経済への貢献を両立させる手段の一つとして位置づけられる。金子工業の取り組みは、その具体的な試みの一例といえる。