• 運営委員長 古阪秀三
      「私たちの主張」は、建設業で働く方々から、将来、建設業で働こうとする若者へのメッセージ、また社会に向けた声であり、今年で10回目となります。今年は全国から503作品の応募がありました。最少年齢は18歳、最高年齢は67歳でした。また、女性の応募が毎年少しずつ増えており、今年は約12%になりました。さらに、20歳以下の若者の応募が約23%、一方では、仕事の第一線を退かれる頃になる熟練の先輩の方々が若者に伝えておきたいという意欲を持って、「私たちの主張」をしてくださいました。応募して下さった503人の方々に心から敬意と謝意を表します。
     今年は国土交通大臣賞に輝いた方が3人いらっしゃいます。まずは大澤仁朗さん。大澤さんは、『私の生涯をかける大工という仕事』と題して、大工になるに至った経緯を、安易に人生の大きな決断をしたこと、口数が少なく、仕事は見て盗めという親方が、直接教えてくれたのが刃物研き、その作業の中から少しずつ一人で仕事の一部を任せてもらうようになり・・・、お客さんから念願の一言「棟梁!」、30歳にして工務店を開業。そして、これからの人生が楽しみだと結んでいる。彼のこれからの活躍が楽しみである。
     2人目の大臣賞は紀伊保さん。紀伊さんは『俺・・・、感動している』と題して、25年前自分が転職を踏みとどまったことを思い出しながら、転職ブームの昔と今に思いを馳せ、自身が新入社員であったころの感動ものがたりを語っている。そして、「仕事とは、『比較』ではなく、『感動』するものではないだろうか。」と書く中で、現在の転職ブームに警鐘を鳴らしている。
     3人目の大臣賞は宮本亜衣子さん。宮本さんは『女性親方に』と題して、「私の夢は、軽天職人として香川県初となる女性親方になること」と結んでいる。その出発点は、香川県に職人育成塾が開講されることに始まる。その時、既に2児のお母さん。職人と子育て母さんの二足の草鞋において、何が苦労であり、何が支えであったかの記録、そして、目指すは女性親方。女性活躍の時代と騒がれる中で、何が重要かを認識させられる主張である。
     土地・建設産業局長賞には次の2人が選ばれました。
     飛田史枝さんは、『自分の居場所』と題して、「社会勉強のためにと軽い気持ちでアルバイトを始めた建設業、全く興味のなかった建設業」、その建設業が「自分の居場所」になるまでを、自身の思い、周囲の目と扱いを通して生き生きと描いている。
     宇田川桜さんは、『家を創るということ』を、小学生の頃は新聞折り込みの住宅情報を眺め、中学生では仕事として家づくりに携わりたいと思い、そして現在住宅建設会社勤務3年目。「女性がいてよかった」から「あなたがいてよかった」と成長したい。素直な意欲が美しい。

     一方、「高校生の作文コンクール」は、工業高校で建築、土木の勉強をする若者が建設業に抱くイメージや夢を発表するもので、今年が5回目で、全国から1235作品の応募がありました。毎年1000人を超す応募があり、しかも意欲ある力作が多く、また、こちらの方でも女子の応募が20%を越えました。応募してくださった1235人の若者の勇気をたたえ、また敬意と謝意を表します。
     国土交通大臣賞に輝いた辻乃々子さんの作文は『魂の継承』。祖父と父親が彫刻家であり、その職人芸を見て育ち、辻さんの夢は固まったという。「歴史的建築物の修繕・修復に関わる仕事に就きたい。」その意思をより強くするために宮大工の棟梁のもとでインターンシップも経験している。そして、先人達のものづくりに対する「魂」を受け継ぎながら、まずは二人を超える職人になれるようにと、意欲満々であり、将来の活躍が目に浮かぶ。
     もう一人の大臣賞の新村歩夢さんの作文は『将来の夢』。「親の背を見て子は育つ」のことわざのごとく、日常経験したことを素直に表現し、また自分の進路・将来の夢に結びつけている。「父が『型枠がないと造れないから一番大事だ』と言っていたと母から教わり、母は『全部無いと出来上がらないのにね、どこに関わっている人でもそういうんだよ。』と私に教えてくれた。」ほほえましい光景が伝わってくる。
     土地・建設産業局長賞には次の3人が選ばれました。
     久留青葉さんは、『「夢」を持つきっかけ』と題して、まだ開通していない新東名高速道路を歩くイベントに参加した時の感動の『心の震え』が建設業に興味を持つきっかけになり、さらに、「人を幸せにすることができる建物を造りたい」という夢になり、建築デザインの勉強に邁進していると書いている。
     矢野莉央さんは『挑戦』。住宅の基礎工事を手伝う中で、メタルの掃除、溶接の手伝い、アンカーボルトの印付けなど、初めての手伝いに挑戦した充実感、住宅が完成した時の達成感に満足している。そして、自分だからできることを多く見つけ、将来につなげたいとしている。
     新村明日加さんは『新3K』。兄が働く建設業に自分も入職したい。そのために建設業のマイナスイメージとして使われてきた3Kとは異なり、多くの産業で働く女性に対する新3K。「きつさ、気配り、きれい」。これを有効に使い、建設業の体質を変えたいと説く。

     「私たちの主張」と「高校生の作文コンクール」の応募作品を読みながら、いつも感じることですが、ご自身の経験談、親や叔父・叔母の背中を見て育った教訓、周囲の人達との雑談・相談など実態に基づく話・文章には迫力があり、また説得力があります。そして、それが契機となって建設業で働くことになったという事例が多いことにも納得です。
     素直に自分が感じたこと・考えたことが書けること、悩ましいこと・問題だと思うことを文字で伝えられること、このことがいかに大切かを「私たちの主張」と「高校生の作文コンクール」を読みながら再認識しました。これからも大いに文章を書きましょう。そして他者に伝えましょう。それらが建設産業の改善、働きがいのある産業へとつながることを期待したいと思います。