「私たちの主張」 - 未来を創造する建設業

  • 水島 千瑛
      私が建設業界を志すきっかけを与えてくれたのは、高校時代の教諭です。その教諭は、女性では珍しい技術科目担当の方でした。芸術が好きで、漠然と美大や芸大に進学しようと思っていた私ですが、文系科目よりも理系科目の成績が良く、その教諭は建築学科のある大学を薦めて下さいました。それまでは建設業への興味は一切ありませんでしたが、その薦めで私は建設業界で働くと決意し、それまでの漠然とした未来を一本の目標に絞り建築学科へ進学しました。
      現場代理人として電気設備会社に就職し、慌しい毎日を過ごす中で、私は結婚して妊娠を理由に退職しました。妊娠の報告後、上長と話し合いをする内に、この会社では働きながらの子育ては難しいと感じたのです。理由は、社員が少人数でありながら関西全域を施工担当しており、常に現場管理をしなければならずフォローできる人員がいなかった事、そして何より女性現場代理人の前例がなかったので、制度や理解度がまだ浸透していませんでした。私はこのまま現場が見られない事で、この会社には迷惑をかけてしまうと自粛の念にかられ、もう建設業界からは身を引こうと考えました。今考えればいくつか方法はあったように思いますが、当時は妊娠しながら働く日常生活にとても疲れていて、お腹の子を守る事に必死だったように思います。こうして退職してしまった私ですが、たった1年半の施工管理としての経験が、その後に私の人生の転機となりました。
      2年の時が経ち、私は再就職を考え、マザーズハローワークに行きました。心の中では、「子育てしながら建設業関係は難しい、就職するのであれば子育てに理解ある女性中心の職場だろう」、そう考えていました。事務職やパート業務等の求人情報を探し、帰宅する間際に、私は壁に貼られている現在お勧めの求人情報の掲示を眺めていました。そこで私は“職人募集、女性も活躍しています”の文字に衝撃を受けたのです。そうだ!現場管理は出来ないかもしれないけれど、職人ならそこまで遅くまでは働かなくても出来るかもしれない!もう一度、建設業界の仕事がしたい! 私は胸躍らせながら、KMユナイテッドという会社に応募しました。ハローワークの方も、女性では見つからないと思っていたけれど、貴女のような方にはぴったりだと後押しして下さり、私は職人になる気持ちで帰宅しました。さっそく夫に報告すると、就業開始時刻が早すぎて保育所に預けられないのではないかと指摘され、初めて終業時間以外を意識し、やはり建設業は難しいのかと落胆しました。
      後日、KMユナイテッドの社長から連絡があり、育児中だと朝礼には間に合わないだろうし、現場が押していれば残業もあり得るので雇うことは難しいと言われました。心の中でそうだろうなと思う反面、私は悔しさを感じました。そんな私を察して下さったのか、その社長はグループ会社で施工管理アシスタント業務の募集を行なっている事を教えて下さいました。前職の経験があるのだから、アシスタントの面接をしましょうと言って頂き、かなり驚きました。何故なら、私は履歴書にもまだ小さな子供がいる事を書いており、それだけでも採用できない理由になると思っていたからです。その後、面接へ向かい、採用担当をされている副社長から、子供が小さい内は勤務時間を8時半から15時半にする事、子供の病気などがあればそちらを優先してほしい事、子供がある程度手を離れた時にフルで働いてほしい事等を事前に話して下さり、この条件でよければ働いてほしいと言って下さいました。私は嬉しさのあまり、すぐに承諾しましたが、ご夫婦で相談して下さいとここでも私以上に家族の事を気遣って下さり、改めてこの会社で働きたいと思うようになりました。
      現在、私は株式会社竹延という塗装工事のリニューアル部門で働いています。業務は図面や積算、書類の整備等を中心に、マンションの改修工事について学んでいる所です。働きながらの育児や家事は正直大変な事も沢山あります。目まぐるしい毎日ですが、大変ながらもいつも考える事は、私が一所懸命に頑張る姿を見せる事で、子供に生きる上で大切な事を教えたいという事です。いつか働くお母さんがかっこよくて好きだと言ってもらえる事が私の目標となりました。
      私の友人は、女性である自分がずっと建設現場で働く為には、子供を作る事は考えないようにすると言いました。私はそういう考え方も筋があって嫌いではありません。しかし、子供がいる事で全て諦める理由にはならないと私は思います。子の成長を糧に、一番家族にとって良い形で働く事が今後建設業で働く女性の為にもなると考えています。建設業界の次世代の女性が、育児をしながら働きやすい環境作りに繋がるよう、これからも頑張りたいと思います。