• 運営委員長 古阪秀三
     「私たちの主張」は、建設業で働く方々から、将来、建設業で働こうとする若者へのメッセージ、また社会に向けた声であり、今年で8回目となります。今年は全国から399作品の応募がありました。最少年齢は18歳、最高年齢は71歳でした。現業の仕事の合間に文章を書くことなど、億劫でなかなか書けるものではありませんが、応募してくださった399人の方々に心から敬意と謝意を表します。
      国土交通大臣賞に輝いた菅野勇也さんは、「先輩の言葉・そして誇りに思える仕事」をテーマに、具体的な日常生活の中で道路維持の仕事を大事にすることと家族を大切にすることの心の葛藤を描き、その葛藤を乗り越えられたのは先輩の一言「その壁を乗り越えたら倍以上のものが必ず返ってくる」、ならびに奥様の粋な計らい「工事現場で働く夫の姿をそっと子供に見せた」ことであったと振り返る。誰もが経験しそうな光景を素直に表現しています。
      もう一人の大臣賞の濱本謙二郎さんは、工業高校土木科卒から一貫して土木施工の仕事に従事してきた人生を「道」と例える。入職前は「きつい」、「汚い」、「危険」の3K 産業と思い、入って実感し、しかし、仕事に慣れたころ「ひ弱な細い体型」から「土木の仕事をしている人」になり、土木施工管理技士になり仕事を任され、工事全体が見渡せるようになり、近隣の方々との交流で・・・。立派な道ができつつあり、いずれ振り返りたいという、その心情を素直に書きとめています。
      土地・建設産業局長賞には次の3人が選ばれました。
      平野惠麻さんは、「現場監督の仕事」と題して、建築の現場監督になってわずか1年半ほどの経験を踏まえてですが、「不安の毎日であるが、現場に出て新しく学ぶことの面白さがそんな不安を消してくれる。そして建築主や多くの関係者が笑顔になるような仕事をするために頑張りたい。」と勇気を持って宣言しています。
      関口美幸さんは、「私はドボジョ」を生き生きとした筆の勢いで書いています。まるで、「土木現場をめざす女子、私のこの話を聞いてよ」と呼びかけんばかりです。最後には、『もしも、この業界に飛び込もうとする女の子がいるのならば、私は少し先輩としてこうアドバイスしたい。「いいじゃん、ドボジョ! 楽しいよ、ゲンバ!」』と締めくくっています。
      水島千瑛さんは、「母親として現場で働くという事」と題して、就職、退職・出産、再就職の経験を書きながら、出産前後、そして再就職をめざす自分への周囲の方の支援がどのようにあったかを具体的に書いています。その結果の再就職で、いつか自分の子供から「働くお母さんがかっこよくて好きだと言ってもらえる事が私の目標となりました。」と力強く宣言しています。

      一方、「高校生の作文コンクール」は、工業高校で建築、土木の勉強をする若者が建設業に抱くイメージや夢を発表するもので、今年が3回目で、全国から1314 作品の応募がありました。昨年よりも一段と応募作品が多くなり、しかも意欲ある力作が多く、また、学校挙げて応募に取り組んでいただいたところもありました。応募してくださった1314人の若者の勇気をたたえ、また敬意と謝意を表します。
      国土交通大臣賞に輝いた松尾麗さんの作文は「夢」。母が突然に言った「建築士の免許をとろうと思う」、それを実現し、いきいきと楽しそうに働く母にあこがれて「工業の勉強がしたい」と思うようになったこと、高校進学後も土木・男性社会の中で勉強することへの不安と母へのよろず相談、そして、「苦労以上にやりがいのある仕事」、「利用者から感謝されることの喜び」を感ずるべく「女性である私にしか創ることができない仕事」を夢見て勉強していこうという、思わず応援してみたくなるような生きた文章になっています。
      もう一人の大臣賞の中川智樹さんの作文は、「土木の魅力とこれからの日本」。その土木の魅力は@ものづくりを通し、仲間の大切さを知ることができること、A土木の仕事には、人には見えない格好良さがある、特に、東日本大震災の復旧時、自衛隊の救助活動の前に道路を開通させた姿はすばらしいと書いています。復旧作業の初動は自衛隊ではなく、土木作業者と技術者であることによく気が付いています。そして、「いつか自分が造るもので、日本の土木技術が素晴らしいものだと世界中の人々を驚かし、感動させたい」夢を語っています。
      土地・建設産業局長賞には次の3人が選ばれました。
      渡部詩乃さんは、「一ミリに変えられた自分」と題して、几帳面で細かい作業が得意だと思っていた自分が、製図で1ミリ間隔の線図ですらうまく描けないこと、それをいかに克服したかを「心のエラーを修正しない限り描けない」として自省をこめて書いています。
      波多海人さんは、「ふるさとの島のために」大工になりたいと書いています。なぜ大工なのか、目指す大工像はどのようなものなのか、わかりやすく素直に表現されています。その言葉のとおりに、信念をもって日々励んでもらいたいものです。
      柴戸清哉さんは、「将来の舗装工事」、将来は舗装工事で周りの人から頼られる存在になりたいとの思いのタイトルで、その思いは、舗装工事の人達が「一生懸命な姿に感動し」、「やった仕事をみて自分達が誇らしく思えてくる」からです。その心を素直に具体的に書いています。

      毎年同じことを書きますが、応募作品を読みながら、「私たちの主張」と「高校生の作文コンクール」にあるような文章を書くこと、その文章を読むことも建設業で働くことの大きな力になり得るんだなあという印象を持っています。ご自身の経験談、親の背中を見て育って得た教訓、周囲の人達との雑談・相談など実態に基づく話・文章には迫力があり、また説得力があります。
      素直に自分が感じたこと・考えたことが書けること、悩ましいこと、問題だと思うことを文字で伝えられること、このことがいかに大切かを「私たちの主張」と「高校生の作文コンクール」を読みながら認識しました。これからも大いに文章を書きましょう。そして他者に伝えましょう。そして、それらが建設産業の改善、働きがいのある産業へとつながることを期待したいと思います。