• 渡部 詩乃
      喜多方桐桜高校への入学のきっかけは、中学時代に授業で見たテレビ番組に心を奪われたからでした。ダムが完成するまでの道のりや、それに従事した人たちの苦悩などをまとめた番組を見て「巨大な構造物を造り、造った人にしか分からない達成感を味わってみたい」と思ったからでした。
      専門教科は、測量、実習、製図など、いくつかありましたが、その中でも一番苦労したのは製図でした。私は、裁縫が得意なことや、家にある本や雑誌を整頓することが嫌いではなかったので、自分のことを几帳面で細かい作業が得意だと思っていました。そのようなことから、きっと製図も上手くやれるだろうと考えていました。しかし、製図のひとつひとつは初めてのことばかりで、製図で必要とされる線をまともに描くことができない自分の技量に気づかされました。一ミリ間隔の線を引くことでさえ、ぶれて濃淡がはっきりせず、美しい図面とは程遠いものになっていることに、苛立ちと恥ずかしさを覚えました。
      そんな時「一ミリの誤差は心のエラーだ」と口癖のようにおっしゃる先生の言葉を思い出し、ふとわれに返りました。研ぎ澄まされた気持ちで製図に取り組んでいない心の未熟さが、苛立ち。そんな取り組みによってできた作品という結末が、恥ずかしさとなって現れていたのだと思います。
      つまり、美しい図面は、「心のエラーを修正」しないと描けないという結論に達したのです。
      これまでの私は、几帳面で細かいだけであって、どこかこれくらいでいいだろうと妥協していたのだと思います。本当に、好きな本がびしっと揃っていたのか、等間隔で並縫いができていたのかなど、普段の生活において、研ぎ澄まされた気持ちで物ごとに取り組むことができるよう努力しました。
      しばらくすると、あることに気づきました。以前は本棚に揃えていただけの本を、出版社やジャンル、作家別に自然と並び替えていたのでした。
      そのころから、線の濃淡や、長さにもこだわりを持って描けるようになり、先生からはお褒めの言葉をいただけるようになってきました。少しずつですが、美しい図面に近づいてきているのだと実感しました。
      私は「巨大な構造物を造りたい」という夢を実現させるため、一ミリの大きさにこだわる大切さを認識できるようになってきたと思います。これからも、たくさんのこだわりを持ち続け、妥協しないものづくりができる技術者になりたいと考えます。