• 運営委員長 古阪秀三
     「私たちの主張」は、建設業で働く方々から、将来、建設業で働こうとする若者へのメッセージ、また社会に向けた声であり、今年で7回目となります。今年は全国から428作品の応募がありました。最少年齢は18歳、最高年齢は70歳でした。忙しい仕事の合間に文章を書くことなど億劫になりがちな中、応募してくださった428人の方々に心から敬意と謝意を表します。
     国土交通大臣賞に輝いた菅真也さんは、2度目の応募で栄冠を獲得したもので、「働く父の背中」をテーマに、実父の背中、会社の上司の背中、息子から見た自分の背中、これら3つの背中を使って、建設業で働くことの意味、厳しさ、大切さ、満足感、そして喜びをうまく表現しています。そして「息子に対しては、誇れる父の背中に一歩近づけたのではないかと思う」と自らが仕事に自信が出てきたことを表現しています。
     もう一人の大臣賞の西久保信輔さんは、「地図に残る仕事がしたい」との思いで建設業に入職したこと、しかし、その思いとは裏腹に、仕事での失敗の連続、現場代理人になった時には現場で働く作業員との衝突。こうした中で、会社での先輩のサポート、下請会社の社長の働く者へのアドバイスなどに支えられながら成長していく自分、そして「地図に残る仕事」よりも大切なことを見出したことを素直に書きとめています。
     土地・建設産業局長賞には次の3人が選ばれました。
     小野寺祥さんは、会社勤務において設計から現場管理へと担当業務が異動したことによって発見した「設計者の自分が失念していた当然のことに気が付いた。図面に書かれた線一本一本を作っているのは人間なのだ」を具体的に誠実な文章で書いています。実際には重要な点を鋭く言い当てた洞察力に驚いています。
     紀伊保さんは、『いまどきの「若者」と「若手技術者」の違い』と題して、28年余にわたる実務経験を活かしながら、「今の若手技術者や職人がどのような思いで働いているか」を世の中の人に知ってもらうべく活動し、その一端が見えたことを生き生きと表現しています。
     熊谷和彦さんは、「建設業!これからもずっと。」と題して、国道維持の現場に配属されてからの経験、自分の息子がその時々に話した言葉、感想などを紹介し、新入社員や息子に誇れる自分でありたい、そのために、これからもずっと建設業に従事する決意を表現しています。

     一方、「高校生の作文コンクール」は、工業高校で建築、土木の勉強をする若者が建設業に抱くイメージや夢を発表するもので、今年が2回目で、全国から1082作品の応募がありました。意欲ある力作が多く、また、学校挙げて応募に取り組んでいただいたところもありました。応募してくださった1082人の若者の勇気をたたえ、また敬意と謝意を表します。
     国土交通大臣賞に輝いた葛城圭巳汰さんは、祖父が宮大工として活躍していたころの「祖父と過ごした日々と祖父の職人としての姿」、この記憶が手伝ってか、宮大工への力強い思いと自分がそうなりたいという強い意思が感じられる文字で作文しています。彼が具体的に宮大工になりたいと思ったきっかけは、小学生時代からの古建築への思い、後世に残っていく建築物を造ることとその技能・技の伝承を強く意識したからで、思わず応援してみたくなるような生きた文章になっています。
     もう一人の大臣賞の矢野龍太さんの作文は、「とびになりたいと考えています。」との書き出しで始まっています。そして、そう思うに至った経過を、高校での実習とその延長としての自主的勉強・調べごと、とび職になった場合の具体的な訓練・担当する仕事の内容・覚悟のほどなどを通して若者らしく素直な流れで書いています。「10年後、・・・誰からも信用され、頼りにされるとび職人になっているはずです。」と締めくくったところに強い意思が感じられます。
     土地・建設産業局長賞には次の3人が選ばれました。
     小野瑞貴さんは、『出会いから夢へ』と題して、テレビの画面で初めて出会った大工親方に実際に出会うことが叶うまでの間の、心の動き、思ったことなどをありのまま書いています。そして、会うことが実現することになると、より強い意思を持って将来への思いを書いています。「私は必ず(大工棟梁になる)夢を叶える。」
     田中千尋さんは、将来の夢を、建設業に入職し、故郷を発展させていくことに貢献することだと書いています。そのために、自らが調べた天草瀬戸大橋の費用対効果であるとか、社会資本整備のあり方などについての意見を取り入れながら、素直な表現で作文しています。
     吉田俊哉さんは、「嘘つきな自分の心変わり」というショッキングなテーマで作文を書いています。それは無知であった自らが、建設業に従事する技術者、技能者の実践教育の場で行われた職業体験研修に参加して、実際を知ることによって見る目が変わっていったことの象徴的表現でした。実習教育の必要性を生徒の立場から書いたものとして考えさせられます。

     昨年も書きましたが、応募作品を読みながら、「私たちの主張」と「高校生の作文コンクール」にあるような文章を書くこと、その文章を読むことも建設業で働くことの大きな力になり得るんだなあという印象を持ちました。ご自身の経験談、親の背中を見ながら育って得た教訓、周囲の人達との雑談・相談など実態に基づく話・文章には迫力があり、また説得力があります。
     素直に自分が感じたこと・考えたことが書けること、悩ましいこと・問題だと思うことを文字で伝えられること、このことがいかに大切かを「私たちの主張」と「高校生の作文コンクール」を読みながら認識しました。これからも大いに文章を書きましょう。そして他者に伝えましょう。そして、それらが建設産業の改善、働きがいのある産業へとつながることを期待したいと思います。