「私たちの主張」 - 未来を創造する建設業

  • 村瀬 淳
     幼い頃、宇宙飛行士に憧れ、飛行機のパイロットに憧れ、消防士に憧れた。そして、小学生の頃からものづくりに興味を持ち、スケールの大きさに憧れて建設業を目指した。

     当時は好景気の中、建設機械を手足のように操作して何もなかった所に道路や建築物を完成させていくおじさん達を見ていた。

     ふと、気付くと、今の自分はそのおじさん達と同じ年頃、同じ立場にいました。 そんなことを気付いたのは、数年前のことです。その頃はある道路改良工事に従事しており、忙しい日々の中、夕方になると決まって愛犬と散歩に来る少年と親しく話すようになりました。

     ある日、その少年が現場事務所を訪ねて、悲しい顔で私に訴えてきました。愛犬が交通事故で死んでしまったと言うのです。慰めの言葉を掛けてみましたが、彼の悲しみを取り除くことはできませんでした。

     その頃から少年は現場に顔を出さなくなりましたが、工事はどんどん進捗して完成間際まで辿りつきました。最後の舗装作業の日、トラブルで夜までの作業を実施する必要があったため、地元住民に残業する旨の了解を得ようと各宅を挨拶して回っていました。その中にあの少年の家もあって、少し気になっていたので家の方に少年の様子を聞いてみると、あれから少年は一生懸命勉強するようになり、「工事のおじさんになりたい」と言っていると聞きました。

     何がどうなって少年はそんな考えになったのか見当もつきませんでしたが、涙が出てくるくらい嬉しく思えました。

     結局その日は夜の9時まで作業を行い、片付けをしている時に、老人が作業員全員分のラーメンを持って現れました。私達は食事を取ることも忘れていたので大変嬉しく思うのと同時に非常に助かりました。

     ラーメンを頂きながら聞くと、老人はあの少年の祖父でした。老人の話によると、今、私達が施工している道路改良工事は、地元が30年以上前から望んでいる道路であり、近くの歩道の無い幹線道路では事故が多く、少年の愛犬もそこで亡くなったということでした。更に、少年は私達が一生懸命に、そして楽しそうに作業を行い、あっという間に景色を変えさせてしまうパワーを持つ建設業に憧れを抱いているという事でした。

     私達作業員一同は、感動と共に、もっと早く工事を終わらせれば少年の愛犬を救うことができたのではないか?と自分を責めました。

     後日、工事は完成し、道路は供用を開始しました。私は老人と少年の家に出向き、お世話になった御礼を伝えました。そのとき、老人は「私には夢があって、新しい道路に車が増えたら、ここでコンビニでもやろうと思っているんだ。」と言いました。私の父親と同じくらいの老人が、道路と共に新しい夢を抱いている。自分たちの仕事はただ社会資本を作るだけじゃなく、人々に夢を持たせることのできる職業なんだと思いました。

     昨日、この文章を書くにあたり、当時の現場に久しぶりに出向いてみると見事コンビニは営業しており、深夜のバイトの方によれば、あの老人は昨年他界されたと聞きました。少年については工業高校で土木の勉強をしているとわかりました。

     私達が携わった道路が、地域やその道路を利用する人にとって便利であるだけじゃなく、夢を与えること、夢を実現させることができることに今一度気付かされました。

     この工事で私は多くのことを学びました。もちろん業務上の知識や体験もありますが、地域の方々の夢や将来に対する思いが社会資本の建設を後押ししていること、自分たち建設業の技術屋は、その社会資本が長く愛されていけるように、しっかりとした仕事をすることが大切なんだと強く感じました。