「私たちの主張」 - 未来を創造する建設業

  • 小山 理絵
     建物の魅力は同じ物が一つもないという事だと思います。同じ用途の建物でも設計者によってさまざまな形になり、施工者は何通りもある施工方法から、現場にあった方法を選びます。私は女性ですが、建設現場の仕事に興味を持ち地元の建設会社に入社しました。

     私は、高校の授業を通して建物を造ることに興味を持つようになりました。授業には建築施工の実習もあり、コンクリートを作り、圧縮強度の試験をしたり、自分たちで加工した木材で小さな小屋を建てたりしました。実習などで物を一から作る楽しさを感じ、いつしか職業にしたいと強く思うようになりました。

     私が生まれ育った町にはお城があり、城下町の雰囲気が色濃く残っています。入社して初めての現場は、お城から目と鼻の先にあり、その景観にとてもマッチした木造二階建てのカフェレストランでした。私はその現場に着工から引き渡しまで携わりました。高校の授業で木造の勉強もしていたので、勉強したことを活かして頑張ろうと思っていました。しかし、勉強していたことと実際の建設現場は、私が思っていた以上に違いがあり、驚きました。まず、躯体の工法が普通の木造住宅とは異なり、接合金物による工法でした。仕口や継手が無く欠損部が少ないため、木材の持つ本来の強度を十分に活かすことの出来る工法でした。そして日本で初めて、クロスラミナパネルという繊維直行型の積層パネルをオーストリアから輸入し、使用しました。木造九階建てを実現した構造材で、断熱性や気密性にも優れているので、厳しい冬でも暖房にかかるエネルギーを抑えることができます。

     ヨーロッパでは木材製品を使用し、地球温暖化防止対策に積極的に取り組んでいると言われています。この建物の設計コンセプトが「森林保全を目的とした環境への負荷軽減を目指した木造建築」であることから、このパネルの採用が決められました。初めての現場で、私はまだまだ学ばなければならないことが山ほどあると感じました。知らなかったことを学んでいくことで、ますます建築の魅力に引き込まれていくのを、日々実感しています。

     最初の頃は、学校と社会の違いに戸惑いを感じながら、私の父くらいの年齢の職人さんとコミュニケーションをとるのはとても難しく、たくさんの失敗をしました。職人さんとは話しづらい印象がありましたが、私が思っていた以上に現場の職人さんたちは優しい方ばかりで、どんな失敗をした後でも、「次は同じ失敗をするなよ。」と励ましてくれました。未熟で、右も左もわからなかった当時の私にとって、その励ましはとても大きな力になりました。

     最初の現場が竣工した時は、建主が毎日カフェの椅子に座り、来る人来る人に自慢げに建物の説明をしていました。私はその姿を見て、胸の熱くなる思いがしました。施工管理は「きつい」、「汚い」、「危険」の3K職場と言われる仕事ですが、やりがいがあり、完成した時の喜びは何物にも代えられません。設計者も施工者も、建物が完成した時は建主以上に喜びを感じるものだと思います。

     一つの建物に沢山の人が関わりますが、着工前から引き渡しまで全工程に携わる施工管理者は、建物を建てる上で、建主と設計者と職人をつなぐ大事な役割だと思います。私が感じていたものづくりの楽しさは、自分が満足するだけのものでしたが、実際にはお客様がいて、職人さんとやり取りをしながら建てた建物は、自分だけでなく、多くの人に喜びを与えられるものだと感じました。

     私は女性で、男性に比べて力もなく、結婚して子供が出来れば家事や育児をしなければなりません。大きなハンディキャップがありますが、それを乗り越え、建設現場は男性だけでなく、女性も活躍できる職場だということを多くの人にアピールして、建物を造る喜びを多くの人と共感したいです。

     建物は二度と同じ物を作ることが出来ませんが、私が年老いても、「ここは私が建てた建物だ。」と胸を張って言える作品を、一つでも多く残していきたいと思います。